神経学的検査の重要性について
2022年6月28日
神経学的検査とは主に脳神経外科医、神経内科医によって行われるもので、意識状態や脳神経(第Ⅰ~Ⅻ)の異常の有無、手足の運動麻痺や感覚障害の有無、近時記憶障害の有無などを医師の診察によって判断する検査です。今回はこの神経学検査が非常に有用であった症例についてお知らせします。
数か月前より左頬にむずむずする違和感があり、既往の副鼻腔炎のせいかなと思っていたが、心配になって来院された60歳代の女性。意識は清明でしたが、神経学的検査を行うと左右の耳側の視野がやや狭くなっているような所見を認めました。ひょっとして下垂体腺腫や鞍上部髄膜腫などの視交叉を下から圧迫する脳腫瘍があるかも知れないとすぐに連携施設でMRIを施行したところ、トルコ鞍上部から視床下部に進展する腫瘍性病変を認めました。連携病院の脳神経外科へ紹介し、造影剤を使った精密検査で鞍上部髄膜腫と診断されました。脳腫瘍による症状は患者さんが直接、訴えていた症状とはかけ離れていましたが、振り返ると本人の訴えは何かおかしい、今までとは違う、といったような漠然としたもののようだったと思います。当施設では頭痛やめまいなどで来院される患者さんに脳内病変が潜んでいるかもしれないことを念頭に置いて、神経学的検査を注意深く行っています。今回はその成果が出た1例であったと確信しています。