てんかん治療の森野クリニック・東京新橋てんかん治療の森野クリニック・東京新橋

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院長ブログ

開業して初めての外科治療へ導けた側頭葉てんかんの患者さん

2021年8月19日

今年の春先に5種類の抗てんかん薬をどれもほぼ極量、服用しても月1回の頻度で意識減損をきたしている患者さんが当クリニックに紹介状なしで来院されました。20歳代の男性で生後7か月時に無呼吸のエピソードがあり、7歳時から意識減損、全身けいれんを認めるようになったとのことでした。現在、通院しているてんかんクリニックでは発作抑制は困難だと言われているとのことで、思い余って私のクリニックに来院されたわけです。

脳波検査を行うと左側頭葉に頻度大の異常波が認められ、左側頭葉てんかんと考えられました。すぐにMRIを施行すると典型的な左海馬硬化症を認めたので「外科治療を行えば、抗てんかん薬の服薬はしばらく続けなければならないけど、発作は抑制される可能性は非常に高いですよ。」と話すと彼は涙ぐみ、「是非、手術を受けて人生をやり直したい。」と言いました。現在の職場ではてんかんがあることで仕事もあまり与えられず、悔しい日々を送っていたそうです。以前、このブログで述べたように側頭葉てんかんには側頭葉内側部に存在する海馬(本来の機能は記憶中枢)がてんかんの焦点となっている群と側頭葉の脳実質にてんかん焦点が存在する群に大きく分けられ、前者の代表的なものは海馬硬化症による内側側頭葉てんかんです。生下時や幼少時に新生児仮死、熱性けいれんなどにより、低酸素症をきたした既往のある方に多くみられ、病態としては海馬硬化症の患者さんのMRIを撮影すると左右どちらか一方が萎縮して小さくなっており、MRIの撮影方法の中でFLAIR法やT2強調法により、海馬自体が白く描出されるのが特徴です。私は400例を超える側頭葉てんかんの手術を行い、典型的な海馬硬化症は手術により、発作が抑制されることを知っていますのでお勧めしたわけです。すぐに外科治療を行っている他施設の仲間に紹介し、無事に手術が終わって抗てんかん薬の服薬下に発作は抑制されています。患者さんはその結果に非常に満足されています。私の今後の仕事は彼が服薬している大量の抗てんかん薬を出来るだけ種類を絞って調節していくことです。

2年前まではこのような難治性てんかん患者さんに手術をする立場でしたが、今は手術治療の適応となる患者さんに私の外科治療の経験から適切な説明を行って、一人でも多くの難治性てんかん患者さんに喜んでいただきたいとあらためて思いました。