見逃されがちなミオクロニー発作
最近、経験したミオクロニー発作をてんかんの症状と思っていなかった患者さんたちのお話です。特に紹介状もなく、てんかんなのかどうか調べて欲しいという希望で来院される患者さんが増えています。
20代の若い女性2名は意識障害や全身けいれんをきたして救急病院へ搬送され、「CTやMRIで異常はないがてんかんかもしれないので専門医に診てもらってください。」とのことで来院されました。また10代の男女3名の患者さんは「不思議の国のアリス症候群」の症状として挙げられている、物が異常に小さくあるいは大きく見える変視症や、時間が異常に速くあるいは遅く流れるという症状で来院されました。
まず、患者さんたちの現病歴を聞いてみると前述の症状を訴えますが、どなたも身体や手のピクツキがあることは訴えません。こちらが「朝起きてコップに水を入れて飲もうとしたときにピクッとしてコップを落としたりしたことはないですか?」と聞くと「コップを落としたりしたことはないですけど、そういわれれば、ときどき身体がビクっとすることがありますね。」という答が返ってきました。5人とも脳波検査で両側同期性棘徐波を認め、特発性全般てんかんの中の「若年性ミオクロニーてんかん」と考えられました。そのうち20代の女性のおひとりは脳波所見で明らかにミオクロニーによる筋電図が混じった異常波が認められたので、「脳波検査中に身体や手足にピクツキがなかったですか?」と聞くと「今日はたまたま身体がビクッとすることがたくさんありました。でもこんなこと誰にでもあるでしょう?」とおっしゃいました。これがてんかんの症状の一つであるとは思っていません。
確かに一般にてんかんと言えば泡を吹いて全身けいれんや意識障害をきたすイメージが強いですから、患者さんがミオクロニー発作を異常と思わないのも無理はありません。このように全身けいれんや意識障害をきたすと病識をもちますが、ミオクロニー発作のみが認められているときは放置されていることが多いので注意が必要です。