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院長ブログ

脳腫瘍を偶然、合併した特発性全般てんかんの2例

2021年11月4日

最近、2例続けて、脳腫瘍(海綿状血管腫)を伴った特発性全般てんかんを経験したので、お知らせします。

まず1例目は10代の男児で全身けいれんを発症し、救急搬送され、MRIで多発性海綿状血管腫と診断されました。径20㎜大の腫瘍が2か所(右前頭葉、左前頭葉)に認められ、さらに3㎜~5㎜大の小さな腫瘍が脳内に10か所認めていました。これらの腫瘍がてんかんの原因と考えられ、抗てんかん薬の投与がなされていました。その後、腫瘍が大きくならずに経過していましたが、全身けいれんをふたたび、認めたため、通院している脳神経外科で腫瘍の摘出を勧められたようです。患児のてんかん発作がこの脳腫瘍が原因なのかどうか?を知りたいとのことで当クリニックを受診されました。脳波を施行すると確かに右前頭葉および左前頭葉に独立した異常波を認めましたが、両側同期性棘徐波複合の所見を認め、これについては脳腫瘍では説明のつかない所見と考えられました。よく聞くとミオクロニー様の手指のピクツキに気づいていたとのことで、脳腫瘍が偶然、合併した特発性全般てんかんと思われました。バルプロ酸Naの服用で発作は抑制されており、腫瘍の大きさには変化がないので手術をせずに観察しています。

2例目は10代の女児で頭痛と意識障害で搬送されました。MRIで左大脳基底核部の海綿状血管腫が出血したものと診断され、腫瘍摘出が行われました。術後から全身けいれんを認めるようになり、腫瘍関連性のてんかんの診断で抗てんかん薬を投与され、発作は抑制されていましたが半年後に減薬したところ、ふたたび全身けいれんを認めるようになり、てんかんの治療を目的に当クリニックに紹介されました。脳波検査を施行すると、特に手術が行われた左前頭葉や側頭葉が焦点となる異常波は認めず、両側同期性棘徐波複合が認められました。よく聞くとやはり手指のミオクロニー様のピクツキが以前から認められていたとのことで、この例も特発性全般てんかんに偶然、海綿状血管腫が合併し、腫瘍の出血がストレスとなって発作をきたし、顕性化したものと考えられました。搬送先の病院での手術で救命されたのですが、家族はてんかんが後遺症として残ったと誤解していましたので、この点については十分、説明をいたしました。同じ脳外科医として術者の気持ちはよくわかります。一生懸命に救命しようと頑張って手術したのに術後にてんかんを後遺症として残したのでは?と自責の念にとらわれたかもしれませんが、術者の先生の名誉挽回ができてよかったです。

発作があって脳腫瘍があれば、つい脳腫瘍が原因のてんかんと考えがちですが、そうではないこともあるので可能性は極めて低いですが、脳波所見や発作内容を充分に吟味して診断することが大事です。