海馬硬化症による内側側頭葉てんかんの外科治療について
2022年5月24日
海馬硬化症による内側側頭葉てんかんで適切な抗てんかん薬による薬物治療にても発作が抑制されない難治性てんかんである場合、外科治療の良い適応となることは以前のブログで説明しました。当クリニックを開院してから2年半になりますが、2例の側頭葉てんかんに手術治療を適応し、症例1は術後1年、症例2は術後2か月になりますが、いずれも発作が抑制されています。術前の抗てんかん薬は症例1は4種類、症例2は3種類の服薬を適切に行っていましたが、2例とも月1~2回の焦点意識減損発作を認めていました。服薬下とはいえ、術後より発作が抑制され、2例とも非常に喜んでおられます。症例1の患者さんは見事に復職され、充実した生活を送られています。2例とも左側頭葉てんかんですが、術後に明らかな脳高次機能障害の悪化は認めていません。私が勤務医時代に発表した論文で62例の海馬硬化症による内側側頭葉てんかんの術後の記憶力について解析し、左側例は術前後で保たれ、右側では言語性記憶力が優位に上昇したことを発表しましたが、これに一致する結果です。
海馬硬化症による内側側頭葉てんかんの外科治療の効果について、まだ熟知されておらず、先日も他院から紹介された患者さん、持参されたMRIで明らかな左海馬硬化症でしたが、まったく説明を受けておられませんでした。このような患者さんに、薬物治療で発作が抑制できなければ外科治療という選択肢があることを伝えていきたいと思います。