抗てんかん薬と授乳
てんかんで抗てんかん薬を服用されている女性患者さんが妊娠され、無事に出産した後、問題となるのが授乳です。母乳育児のメリットとして母親から母乳を介して免疫物質が移行するため病気にかかりにくい、母親とのスキンシップが多くなること、乳幼児突然死症候群の発症率が低くなること、母体の子宮収縮を促すので産後の回復が早いこと、ミルク代が節約できることなどが挙げられます。このため赤ちゃんを育てるのなら、母乳で育てたいという思いがある方もいらっしゃるでしょう。そこで抗てんかん薬を服用しながら授乳して大丈夫なのか調べてみました。
抗てんかん薬の添付文書には「授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。〔ヒト乳汁中へ移行することがある。〕」と記載されています。
母乳育児中の抗てんかん薬の使用についての論文がありました(Use of antiepileptic drugs during breastfeeding: Whato do we tell the mother? Der Nervenarzt 2018 Aug;89(8);913-921で著者はCrettenand M)。論文の内容は23種類の抗てんかん薬について母乳育児の安全性に関して述べられた論文を調べ、そのうち15種類の抗てんかん薬が比較的、安全であると結論している。具体的にはフェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、レベチラセタムの5剤は母乳育児に適合しているとし、フェニトイン、エトサクシミド、クロナゼパム、オキシカルバマゼピン、ビガバトリン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリギン、ゾニサミドの10剤は母乳育児中の乳児に対する副作用を慎重に観察できるなら薬の使用を認められるとのことでした。論文の結論としては最終的には患者さん(母親)のてんかんの状態を含めてそれぞれの患者さんの母乳育児により、乳児に与える影響のリスクについて考慮することが重要としています。
※文中の抗てんかん薬の一般名に対する商品名を( )内に記しました。
フェノバルビタール(フェノバール)、プリミドン(プリミドン)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケンR、セレニカRなど)、レベチラセタム(イーケプラ)フェニトイン(アレビアチン)、エトサクシミド、クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)、オキシカルバマゼピン(トリレプタル)、ビガバトリン(サブリル)、トピラマート(トピナ)、ガバペンチン(ガバペン)、プレガバリン(リリカ)、ラモトリギン(ラミクタール)、ゾニサミド(エクセグラン)