てんかん治療の森野クリニック・東京新橋

脳神経外科 内科 外科|森野クリニック

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院長ブログ

てんかんに似た病気 一過性全健忘

2021年1月5日

私が日常的に診療している「てんかん」のなかで抗てんかん薬が効かなくなり、手術で治療をすることがある「側頭葉てんかん」があります。このてんかんは側頭葉の内側に存在する本来は記憶中枢である「海馬」がてんかんの焦点になっている疾患です。出生時の新生児仮死、幼少時の熱性けいれんなどによる一過性の低酸素脳症により、海馬自体の変性が原因とされていますが、その他にも側頭葉の脳腫瘍や皮質形成異常などが原因となります。発作の内容は食道あたりにこみあげてくるような不快感や過去の景色が浮かんでくるような既視感が前兆として認められ、その後、眼は開いていますが、物をまさぐるような場にそぐわない行動をとったり、口をモグモグ、パクパクさせるような自動症を伴いながら、「心ここにあらず。」状態の意識喪失をきたします。患者さんはこの発作中のことは記憶がありません。そのため、意識が戻ったあとは混乱をきたすことが多いです。

さてこの側頭葉てんかんの発作とよく似た状態の疾患があり、鑑別が必要となるのが「一過性全健忘」という病気です。中年の男性に多く、原因は不明で再発は稀とされています。症状の特徴は突然の記憶喪失で、自分の名前などは覚えていますが、最近、憶えたことを思い出せず、一時的に新たな記憶ができなくなります。患者さんはこの状況は認識できており、周囲に自分が何をしているのかを繰り返し質問してくる特徴があります。この状態は数分から4~5時間続き、その後、記憶は回復します。この発作中、言語障害は認めず、書字、運転、計算などの複雑なこともこなせます。

先日、50歳台の男性がてんかんかどうか?を調べてほしいと来院されました。子供と公園で遊んでいるときに突然、記憶がすべて消えた状態となり、近医でてんかんと診断され、抗てんかん薬を処方されたとのことでした。当クリニックで脳波検査を行いましたが、明らかな異常波もなく、MRI上も明らかな異常所見はありませんでした。発症時の様子を詳しく、聞きましたが、側頭葉てんかんとは考えにくく、「一過性全健忘」と診断しました。抗てんかん薬の服薬は中止して様子をみるように指示し、その後、特に発作らしきものは認めていません。この「一過性全健忘」はてんかんと鑑別すべき疾患として重要です。