不思議の国のアリス症候群
2021年3月16日
前回、側頭葉てんかんについて触れましたので、今回は私が手術したてんかん患者さんから聞いた症状、「不思議の国のアリス症候群」について述べます。
この症状は特に眼に異常はないのに、自分の周りの人や物体が通常よりもきわめて小さな、あるいは大きなものになったように感じるものです。これは物体が実際より非常に遠く、あるいは近くにあるように感じられ、その結果、そのように見えるものだと思われます。この症状を訴えた患者さんは左海馬硬化症による内側側頭葉てんかんの患者さんでしたが、本当に周囲の人が小さく見えて困ったようです。実際の距離より遠くに存在している感じであったと仰ってました。手術治療により、術直後から発作は抑制され、現在はこの「不思議の国のアリス症候群」は消失していますが、手術直後の数か月間は認めていたようです。
調べてみますとこの症状はエプスタイン・バールウイルス(EBウイルス)の感染で引き起こされた中枢神経系の炎症で起こることが多いとされ、このEBウイルスには子供のころに感染する人が多く、子供のころにこの不思議な体験をした人が多いとされています。成人しても「不思議の国のアリス症候群」を持つ人の多くは片頭痛を患っている人が多く、‘’不思議の国のアリス‘’の著者であるルイス・キャロルは片頭痛で悩んでいたことが知られており、この作品は彼の体験が書かれたものと推測されています。
他のウイルス性脳炎やてんかん、薬物によっても引き起こされる場合があると報告されています。