頭部外傷とてんかん
頭部をスポーツや交通事故、転落事故などで強く打撲した場合、脳挫傷をきたすことがあります。脳挫傷とは強い打撲により脳実質が揺れて、脳の表面が頭蓋骨の内側面に強く打ちつけられたことにより、脳表に傷がつくことをいい、場合によっては大きな脳内出血が引き起こされます。その脳挫傷、外傷性脳内出血により、けいれん発作がおこることがあります。
24時間以内や1週間以内にけいれん発作をきたす場合は超早期あるいは早期てんかんと呼ばれ、予後は良く、抗てんかん薬による治療は短期間で済む場合が多いです。しかしながら、受傷後1週間以上たってから、引き起こされる晩期てんかんは長期的な治療が必要になり、中には難治性てんかんとなることもあります。
私の患者さんの中には脳挫傷により、多発性脳内出血をきたし、前頭葉や側頭葉に広範囲に脳損傷があり、てんかんの重症度が高い人もありますが、両側の側頭葉が脳挫傷で損傷を受けていても少量の抗てんかん薬の服用で発作が抑制されている患者さんもあり、脳損傷の大きさだけではてんかんの程度が判断できません。私のてんかん手術経験で外傷性てんかんが17例あり、そのうち脳挫傷などの損傷部位と手術部位が一致したものは11例、残りの6例は脳損傷以外の部位(側頭葉内側部の海馬など)が二次性にてんかんの原因となっていました。
あと、高齢者やアルコール酩酊でよく転倒する人で頭部外傷後に2~3か月経過してから、脳表に血腫ができて、徐々に増大し、脳が圧迫されて片麻痺や認知症状などの神経脱落症状が引き起こされる「慢性硬膜下血腫」がありますが、この疾患も転倒して頭部をよく打撲する発作をもっているてんかん患者さんには起こりえますので注意が必要です。