脳腫瘍とてんかん part1 ~海綿状血管腫
2021年3月30日
脳腫瘍がてんかんの原因となっている例も多くみられます。てんかんの原因となる脳腫瘍について2回にわけて述べます。
脳腫瘍は脳内の神経細胞が腫瘍化したものと脳外の組織から腫瘍が発生したものに大きく分けられます。前者は腫瘍と正常脳組織との境界がはっきりしていませんが、後者は境界が明瞭であることで区別されます。今回は後者の代表例でてんかんの原因となる頻度の高い海綿状血管腫についてです。
この腫瘍は先天性血管奇形のものがほとんどですが、脳への放射線照射後に発生することがあります。脳内に多発する海綿状血管腫には遺伝による家族性の症例が多いとされています。MRIの所見では内部に腫瘍の本体があり、その周囲に血管腫から出血したあとに残る血液成分のヘモジデリンが沈着した部分が認められることが多く、その部分がてんかんの原因となるとされています。てんかん発作が難治である場合は外科治療となりますが、発作を抑制するためには腫瘍本体だけではなく、その周囲のヘモジデリンが沈着した脳組織も一緒に切除しなければならないこともあります。私が行った難治性てんかんを伴う30例の海綿状血管腫の手術例のうち20例は腫瘍の首座は側頭葉でした(前頭葉8例、頭頂葉1例、島回1例)。側頭葉にこの腫瘍が存在する場合は腫瘍の大きさが小さい例でもてんかん発作が認められることが多く、発作を抑制せずに放置しておくと側頭葉内側部にある海馬が二次性にてんかんの焦点となり、発作が難治化することがありますので、診断されれば早期に抗てんかん薬による発作抑制を行うことが重要です。
次回はてんかんの原因となる脳腫瘍のうち神経膠腫についてです。