前頭葉てんかん
焦点てんかん(以前は部分てんかんと呼ばれていたもの)のなかで側頭葉てんかんについで多くみられるのが前頭葉てんかんです。
発作内容および発作の特徴としては明らかな前兆がなく、突然、意識減損をきたしますが、持続時間が多くは1分以内で短く、基本的には発作後は意識回復が早く、発作後の混乱はみられません。しかしながら、発作が起こると、その日に何度も続けて群発することが多く、就寝中の夜中や明け方に発作が起こりやすく、大きな叫び声をあげることがあります。
前頭葉は後方に運動領野が存在するために運動性要素が強い発作がおこります。前頭葉内側面にある補足運動野という領域が焦点である場合は発作時に頭や首を焦点と反対方向に回転させ、フェンシングの選手のようなポーズをとったり、そのほか寝床で、のたうち回るような過運動発作をきたすこともあります。側頭葉てんかんと違って記憶力が大きく低下することは稀ですが、言語能力や意欲の低下がみられることが多く、興奮性が増すと自分を抑制することが困難となる場合があります。
抗てんかん薬の投与にても発作が抑制されずに難治化した場合、側頭葉てんかんと同様に外科治療の対象となります。しかしながら、側頭葉てんかんでの海馬のような焦点となる構造物がないため、焦点診断が非常に難しい症例が多く、手術による発作消失率は側頭葉てんかんより劣ります。私の手術成績では73例の前頭葉てんかんのうちMRIで脳腫瘍や皮質形成異常などの器質性病変を認めていたものが43例、まったくMRI上に異常所見のないものが30例で、器質性病変のある43例は80%以上の発作消失率が得られましたが、器質性病変がない30例は60%程度で有意差がありました。