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院長ブログ

新しい片頭痛の予防薬 エムガルティ

2021年5月21日

片頭痛に対する治療は主にトリプタン系製剤を発作時に服用します。この薬剤特有の副作用として、トリプタン感覚と呼ばれる頚・胸・のど・肩の締めつけ感や圧迫感、息苦しさといった不快感をおこすことがあります。また、慢性的に使いすぎると薬物乱用頭痛をおこすことが知られており、頓服としては月10回分までの処方が一般的です。しかしながら、中には難治な片頭痛でお困りの患者さんで、月に10回以上の服薬を希望し、複数の病院やクリニックを渡り歩いている方がおられます。我々、脳外科医は頭痛の原因となる病気をたくさん知っていますのでMRI検査で異常がないことを確認するべきと考え、検査なしでは処方できないとお断りすることもあります。

MRI検査で頭蓋内に異常がなく、症状から難治な片頭痛と診断されれば、予防薬として抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウム、抗うつ剤である塩酸アミトリプチン、β―ブロッカー(降圧剤)である塩酸プロプラノロールなどが用いられますが、それぞれの副作用などで継続して服用している患者さんは20%に達しないといわれています。

そこで、エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)が新発売されました。これは片頭痛発作が起こるのを緩和する新しいタイプのお薬です。患者さんの脳内に増えているCGRPという物質が脳血管に作用して片頭痛が出現するのですが、エムガルティはこのCGRPのはたらきを抑えて片頭痛を緩和します。試験ではエムガルティの投与により、片頭痛の日数が平均して半減し、トリプタン系薬剤の使用回数が減少したと報告されています。投与方法は初回に2本(1本:120㎎1mL)を皮下に注射し、2か月目から1か月ごとに1本、注射します。大体3か月目(3回投与)まで注射を行い、効果を見ます。よくみられる副作用は注射部位(上腕部、腹部、臀部、大腿部)の痛みや発赤、かゆみです。治療の対象はMRIなどで頭蓋内病変がないことが確認されている18歳以上の慢性片頭痛で、本薬剤を投与する3か月以上前から頭痛が平均して月に4日以上認められ、予防薬の効果が不十分な患者さんです。保険適応とはいえ薬価が高額です(3割負担で3か月間の治療で約54,000円、診察料等は別にかかります。)が、難治性片頭痛でお悩みの方はご相談ください。